主語はどうやって決まるの?:文の構造

文の構造とは?

私たちが日常話したり書いたりしている文(Sentence)にも構造が存在します。言語学において文の構造を扱う学問分野を統語論(Syntax)と呼びます。

では文の構造とはどのようなもので、何のために必要なのでしょうか?

構成素構造

次のような英文について考えてみましょう。

これらの文の主語や目的語は容易に見当がつくでしょう。

太字の部分が主語で、斜字体の部分が目的語です。

では、これらの主語や目的語はどのようにして決まるのでしょうか?

主語や目的語と呼びますが、主語や目的語となるものは単語ではありません。これらは1個以上の単語からなるまとまりで句(Phrase)と呼ばれます。文はこの句から構成されています。文自体も句の1つです。

どの部分が句を構成しているかどうかはいくつかのテストを通じて確定されます。

例えば、

を、

の文に変える過程を主語・助動詞倒置(Subject-Auxiliary Inversion)と呼びますが、この過程によって移動する斜字体の部分が1つの句を構成していると考えられます。

また、

の各文の主語と目的語の部分を代名詞に置き換えて次の文にすることができます。

この過程を代名詞化(Pronominalization)と呼びますが、この代名詞によって置き換えられる部分が1つの句を構成していると考えられます。

この他にも、

などの事例から、文の各要素の構造を確定していきます。

そうすると、

は、

の[]で示されるまとまりから構成されていることになります。

このような[]で示されるまとまりを構成素(Constituent)と呼び、この構造を構成素構造(Constituent Structure)と呼びます。

句構造

しかし、上のようなまとまりに関する情報だけでは十分ではありません。各まとまりの性質に関しても調べなければなりません。これに関しても幾つかのテストがあります。

例えば、

の太字の部分と斜字体の部分を置き換えて、

のようにしても、英語の文として適格です。したがって、太字の部分と斜字体の部分は同じ性質を持つ構成素ということになります。

これに対して、

のように置き換えが不可能な場合は異なる性質の構成素ということになります。

このような様々なテストを経て

のようにラベル付き(太字の部分)の構成素構造が確定します。このラベル付きの構成素構造を句構造(Phrase Structure)と呼びます。

この句構造を産み出す規則を句構造規則(Phrase Structure Rules)と呼びます。今まで見てきた英文に関わる句構造規則を書き出すと以下のようになります。(10)

  1. 各記号の意味は以下の通りです。

    S (Sentence:文), N (Noun:名詞), V (Verb:動詞) A (Adjective:形容詞), Adv(Adverb:副詞), Det(Determiner:限定詞), P(Phrase:句)

    したがって、NPはNoun Phraseとなり、名詞句を表します。

    また、括弧で括られた構成素は、随意的要素、すなわち、あっても無くても良い要素を表します。

文法関係

主語(Subject)や目的語(Object)(11)文法関係(Grammatical Relation)と呼ばれます。

英語ではこれらの文法関係を、以下に示すように、句構造に基づいて求めることができます。

主語はSの直ぐ下のNP
[S [NP John ] [VP loves [NP Mary ] ] ]
目的語はVPの直ぐ下のNP
[S [NP John ] [VP loves [NP Mary ] ] ]

日本語ではこれらの文法関係を格助詞(後置詞)を使って表します。

主語には「〜は」を付ける
ジョンはメアリーを愛している
目的語には「〜を」を付ける
ジョンはメアリーを愛している

ただし、日本語の格助詞には文法関係以外の概念も入り込んでいるので注意が必要です。

  1. 英語では、直接目的語(Direct Object)と間接目的語(Indirect Object)の2種類が区別されます。