語形成と意味

述語項構造

語形成と意味を考える際の基本となるものは、述語項構造(predicate argument structure)である。

例えば、eatという動詞について考えてみよう。

eatは、「何か(これをxとする)が、別の何か(これをyとする)を食べる」という事態を記述する言葉である。このような、何らかの事態を記述する言葉を述語(predicate)と呼ぶ。そして、xyのような、この事態の記述に必要不可欠な要素を項(argument)と呼ぶ。

eatが持っている述語と項の関係を述語項構造(predicate argument structure)と呼び、通常は以下のような、より形式的な形で表す。(6)

[x eat y] または eat (x, y)

述語は、それが必要とする項の数によって、以下のように分類される。

1項述語(1-place predicate)
real(x): These things are real.
2項述語(2-place predicate)
hit(x, y): The man hit the tree.
3項述語(3-place predicate)
give(x, y, z): John gave Mary a present.

これらの述語項構造において、一番左端にある項(通常はxで、文においては主語となる場合が多い)を外項(external argument)と呼び、それ以外の項を内項(internal argument)と呼ぶ。

  1. 項は、統語上の主語・目的語と似てはいるが、異なったものである。例えば、動詞のeatは、John eats a good meal.のように、主語と目的語をとる他動詞としての用法の他に、John eats between meals.のような、主語しか取らない自動詞としての用法があるが、どちらの場合も項構造は同一であり、自動詞の用法の場合も二つの項を必要とする。

語形成と述語項構造の変化

語形成における意味変化の重要な部分は、述語項構造の変化として捉えることができる。

例えば、動詞のreadの述語項構造はread(x, y)で、A lot of people read the book.の例のように、他動詞として、主語と目的語をとる。

しかし、動詞のreadに接尾辞の-ableを付加した結果出来るreadableは、The book is readable.の例のように、他動詞の目的語だったthe bookが主語となる。このreadableの述語項構造はreadable(y)である。

接尾辞の-ableのこのような特性を、形式的に記述すると以下のようになる。

-able:P(x, y) → P(y) + ABILITY

上記のような、それまでの外項が消滅し、内項が新たな外項となる過程を外項化(argument externalization)と呼ぶ。

外項化と逆の過程も存在する。

形容詞realは、Your dreams are real.の例から、real(y)という形の、外項しか持たない1項述語である。しかし、realに接尾辞-izeが付加されたrealizeは、You can realize your dreams.の例から分かるように、realize(x, y)という2項述語となる。

接尾辞の-izeのこのような特性を、形式的に記述すると以下のようになる。

-ize:P(y) → P(x, y)

上記のような、それまでの外項が内項となり、新たな外項が作り出される過程を内項化(argument internalization)と呼ぶ。

以上は、述語の項の数が増減する変化であるが、これ以外に、述語から項に変化する場合もある。

接尾辞-erは、述語について、その述語の外項を指し示す語を生み出す。

-er: P(x) → x of P(x) 
 例:actor, swimmer, maker, employer

接尾辞-eeは、2項述語について、その述語の内項を指し示す語を生み出す。

-ee: P(x, y) → y of P(x, y)
 例:employee, nominee

主題関係

述語項構造では、P(x, y)のような、きわめて抽象的な形式のため、xyの各項の持つ意味特性が把握しにくい。そのため、各項に共通する意味役割を付与する考え方もある。このような考え方を主題関係(thematic relation)と呼ぶ。ただし、各項にどのような意味役割を付与するかは、研究者毎に違いが大きい。例えば、動詞eatの主題関係の表示の代表的なものとしては、eat(Agent, Theme)やeat(Actor, Object)などのようになる。

以下に代表的な意味役割を挙げる。